東京は個性際立つピッツェリアのオープンラッシュ。その中でもとりわけ異彩を放つのが東東京は新御徒町の「ファカロー ピッツァ ギャラリー」。やわらかさを極めた生地で、もはや“飲める”と話題だ。『エル・グルメNo.34』掲載。
Photos SATOSHI FUKUDA
トマトソースとモッツァレッラのシンプルな具に、焼き色が付いたコルニチョーネ(ピザの縁)。気取らない雰囲気は、正統派ナポリピザのたたずまいだ。しかし驚くのはここから。口に入れた瞬間、とろけるようにやわらかい生地が具と一体化し、するりと喉の奥に消えていく。もはやこれは、“飲める”ピザ!
「すごくうまいものって、見た目の印象をはるかに超えてくる。『これって仮想現実?』と思わせるような、脳が“バグる”ピザを作りたいんです」
そう語るのは、このピザの生みの親、店主の通称ナポさん。もともと機械工学を学び、板金加工やロボット製作などをしていたナポさんは、小麦粉と塩と水だけで生地を構築するピザの奥深さに魅せられ渡伊、ナポリの有名店などで3年半修業し、オリジナルのスタイルを築き上げた。“飲める”ピザのきっかけは、とあるナポリの有名職人が手掛けた一枚。
「やわらかさに衝撃を受けました。でもその人が作れるなら、自分にだって作れるはずだと思って」
食感の決め手は、グルテンの生成をぎりぎりまで抑えた特殊な製法。加水のタイミングや発酵時間、生地の保管容器に至るまで、独自の工夫を重ねて編み出したものだ。“自分で作る”。ナポさん最大の強みは、そこにある。店は自ら設計と施工を行い、クールなアルミ外装が目を引く窯も自作。薪とガスのハイブリッド方式で、すすを出さず、効率的に高温を保つことができる。食材も「既存のルートでなく、なるべく自分で探して、自分で作りたいんです」と、小麦粉は地元・群馬県産を100%使用。野菜は千葉の「自然野菜のら」の有機野菜などを使い、自身も栽培に関わっている。
今後は小麦も自家栽培、自家製粉を目指すほか、トマトソースやチーズも自家製に切り替えるのが目標だ。ピザも店主も規格外、型にハマらないのがナポ式。この店に魅了され、全国からグルメの猛者が殺到するのもしかたない。東京のピザの劇的な進化を、身をもって知るはずだ。
右上から時計回りに「リコッタエサラーメ」¥2,700、「マルゲリータ」¥2,000、発酵させた葉野菜を使った季節のピザ「カーボロネーロとサルシッチャ」¥3,400。
「ピザを中心にした複合施設も作りたい」とナポさん。人を楽しませるのが大好き。
「彩り野菜と生ハムのミックスサラダ」(2人前)¥1,900などの前菜や、ナチュラルワイン(グラス¥900〜)の用意も。
朝が楽しみになり、日々のごほうびになる。パンは身近な存在でありながら、理想の味を追い求めるパン職人の手によって進化を続けている。
N.Y.で話題の“進化系クロワッサン”、“世界のパン”や“中華パン”といったキャラ立ちパンの専門店、シェフが力を注ぐ“湯種”や“麹使い”などのマニアック製法で作るシンプルパン、まるで料理なごちそうサンドイッチなど、知れば知るほど楽しいパンの世界をご紹介。
「」と思ったら、『エル・グルメ No.34』をチェックして。