イギリスの歌姫エリー・ゴールディングは、ヒットソングをリリースし続ける一方、熱心な活動家でもある。2021年のツアーは、プラスチックを使用せず、再生可能エネルギーで実施した。COP27で環境保護を訴えるスピーチをしたり、『タイム』誌の「100 Impact Award」を受賞したりと、数えきれないほどの活動を行っている。
「私たちはみんな自然の一部です！」
──いつ、どのように環境問題を意識するようになったのでしょうか？
エリー・ゴールディング（以下EG）： 私はイギリスの田舎で育ち、すべての種、植物、動物、菌類、つまり私たちはみんな一緒なんだという理解が本能的にしみついています。自然が私たちから切り離されたものであるかのように語る人たちを、いつも不思議に思っていました。私たちは自然の一部です。音楽業界に入って世界中を旅するようになってから（旅によるCO2排出の問題はあるけれど……）、生態系を守るために戦う人々にたくさん出会うようになり、自分の影響力が大きくなればなるほど、そういう人たちを応援したいと思うようになりました。
同時に若いファンたちから、気候変動はどのくらい進んでいるのか、10年後には絶滅する動物が増えるのではないか、などと、衰退していく地球や自分たちの将来を心配する声をたくさん聞くようになりました。それで専門家に話を聞きたいと思うようになりました。
──UNEPに参加するようになったきっかけは何ですか？
EG：私は科学が大好きですし、専門家と話したりその仕事ぶりを見たりするのも好きなんです。最先端の科学を世界中のコミュニティのために取り入れている国連環境計画（UNEP）は、私にとって学びの場であり前向きな解決策を示してくれる存在です。自分の居場所であると感じる一方で、UNEPから親善大使の依頼を受けたときは緊張もしました。私はシンガーソングライターであり政治家や環境科学者ではないので、国連のようなプラットフォームやCOPのような世界的な環境会議で話すことは、これまでにはない経験でした。じつをいうと深刻なインポスター症候群に陥っていました！ でも、あらゆる機会を使って世界中の人々に気候危機を訴えるため、自分を奮い立たせてきました。大切なのは、姿を現し声を上げ続けることだと思います。
──この写真について教えてください。
EG：この紅海のサンゴ礁の写真は、2022年11月にシャルムエルシェイクで開催されたCOP27の国際気候サミットを前に、UNEPのとあるミッションに参加した時のものです。世界で最も美しいサンゴ礁のひとつであるエジプトのグレートフリンギングリーフを自分で探検したことは、忘れられない思い出になりました。排出ガスによる海水温の上昇にもかかわらず、サンゴの生態系は奇跡的に健全で、無数の種が息づいている生命の脈動が感じられました。
地球の気温が1.5度上昇するとサンゴ礁の70～90%が消滅
しかし、例えばプラスチック汚染によって消滅しているサンゴ礁もあります。プランクトン、魚、鳥、ウミガメ、哺乳類に至るまで、さまざまな海洋生物がプラスチックを食べて窒息したり、プラスチックに絡まったり、毒殺されたりする危険にさらされています。また、サンゴやマングローブなどの海洋植物も、プラスチック廃棄物によって酸素や光を制限され、窒息してしまいます。海洋生態系、特にサンゴ礁は、地球の気温の上昇によっても深刻な脅威にさらされています。
地球の気温が1.5度上昇すると、5億年前から存在する生態系であるサンゴ礁の70～90%が消滅すると言われています。2度では、99％になると予測されています。私が参加したミッションの目的は、何が危機に瀕しているかを示すことでした。私たちが制作した映画はCOP27で上映され、世界の指導者や、意思決定者、企業に対し、サンゴ礁の保護と修復を優先し資金を提供すること、そして世界の排出削減目標を達成することにお金をかけるよう説得するためのものです。COP27でスピーチした数時間後、このサンゴ礁の保護を強化する計画が合意されたことを聞き、うれしかったです。ですが、引き続きもっと意識を高めて圧力をかけ続ける必要があります。
──UNEPのゴールは何ですか？
EG： UNEPは、気候変動、生物多様性の損失、大気汚染という、3つの地球の危機に対してアクションを起こすよう提唱しています。私がいつも話していることのひとつは、私たちは自然から切り離された存在ではなく、自然の一部であるということです。すべての個体、すべての種、すべての生態系には、すべてのバランスを保つために果たすべき役割があります。UNEPは、このつながりについて専門的に認識を高めています。
──親善大使としての活動のなかで目撃した最悪の出来事とは？
EG：気候危機の最前線にある地域、たとえば東アフリカの農村地域を訪れると、干ばつや環境の変化に対応しなければならない状況下でもその手段がないことが多く、本当に衝撃的です。また、気候危機の原因となる温室効果ガスの排出量が極めて少ない人たちほど、大きな打撃を受けることに常に直面することになります。私が目撃した最悪の事態は、関係者の自己満足です。ケニアで開催された国際サミットで、自分の国の環境大臣が出席していないのを見たときが、一番腹が立ちましたね。
──では反対に、最も希望を感じたことは？
EG：旅先ではどこでも、地元の環境プロジェクトを訪ねるようにしています。各地で生態系の復活を目指す自然の再野生化プロジェクトなど、本当にすばらしい自然保護活動をたくさん目にしてきました。イギリスは地球上で最も自然が破壊されている国のひとつですが、スコットランドからコーンウォールの南端まで、大規模の自然再生プロジェクトが行われているのです。私もできる限りのことに取り組んでサポートしていきたいです。
美しい地球を守ることを第一に、もっと多くの人が立ち上がるべき
──最近、気候や自然の危機をめぐる会話が変わってきたと感じますか？
EG：より良い方向に変化していると思います。Vanessa NakateやXiye Bastidaのような若いグローバル気候リーダーたちは、世界中の若者の希望と不安を見事に表現してくれる存在で、本当に尊敬します。また、今年の「アースショット賞」では、サポートしたいという思いからパフォーマンスを行いました。でも、気候危機という現実に、まだ十分な焦点が当てられているとは思えません。私たちの運命を握っているのはスーツを着た年配の男性たちばかりで、まだこの美しい地球を守ることを第一に考えられていないと感じます。特にエンターテインメント業界からは、もっと多くの人が立ち上がる必要があるけれど、私はまだひとりぼっちだと感じる時があります！ 今年の世界環境デー（6月5日）のテーマは「プラスチック汚染の解決」です。UNEPの世界地図に皆さんのイベントを掲載し、ソーシャルメディアを通じて変化を促してください。私たちはみんな、#BeatPlasticPollutionの運動の参加者なのです！
──「地球に平和をもたらす者（a planet peace-maker）」として、あなたのモットーは何でしょう？
EG：地球に平和をもたらす者になるには、まず最高にカッコいい戦士になることです。6月5日の「世界環境デー」と6月8日の「世界海洋デー」が、みなさんにとって良い日でありますように。学ぶべきことはたくさんあるので、できるところから参加してください！
（100%リサイクル可能なエコ素材でできているレコードを発表。）
──2023年の歌手としてのプロジェクトは？
EG：私の新しいアルバム『Higher Than Heaven』が4月7日にリリースされました！
ELLE ACTIVE! for SDGs（エル アクティブ）とは？
あらゆる人をエンパワーし、より良い変化を共に創るエルのプラットフォーム。サステナビリティ、ジェンダー、働き方など 未来のための情報とアクションを発信します。“あなたが見たい変化に、あなたがなる”ために。
